年金改革法遂に成立

くましろ昭彦国会短信第35号(00/4/11)

 平成12年3月28日、年金改革関係7法案が可決成立しました。「年金の熊代」が主導した改革案はついに成立しました。改革には厳しさが伴いますが、しかし、絶対に必要な改革なのです。是非理解していただきたいと思います。

1.この改革で日本の年金制度は今後50年は大丈夫

(1)この改革の第一の狙いは「今後50年、間違いなく老後生活の主柱となる安定した年金制度の確立」です。そのための厳しい改革です。しかし改革への痛みを最小限に止めるために次のような工夫をしました。

ア 現在の年金額プラス物価スライドは堅持

 現在受けている国民年金及び厚生年金(共済年金も同様。以下同じ)は1円たりとも減額することなく、且つ、将来とも物価スライドによる年金額の引き上げは堅持します。

イ これから年金を貰う人にも改正前の年金水準プラス物価スライドを堅持

 これから(平成12年4月以降)裁定される年金も改正前の年金水準(平成12年3月裁定迄の水準)プラス物価スライドの水準は将来とも保証します。

(2)第二の狙いは年金保険料の負担が働く世代に過重にならないようにすることです。

 第一の狙いを実現しつつ、且つ、若い世代の年金保険料の負担が過重にならない(負担のピーク時でも本人負担は総収入の10%未満の保険料率とする。事業主が別に同率負担)ように思い切った改革を行い、超高齢社会にも安定し、立派に機能する年金制度を確立することが今回の年金大改革の狙いです。そのために次の改革を行いました。

ア 立派に働いておられる65歳以上70歳未満の人に保険料の負担をお願いする

 このアと次のイを併せて60歳台後半の在職老齢年金制度の導入(平成14年4月以降に65歳になられる方に限ります。その前に65歳になっておられる方は保険料を払う必要はありません。年金額も調整されません。)と言います。実はこの制度は昭和60年改正のとき以前はあったのです。それを新しい形で復活して、60歳代後半の職場で働いている方は現に社会を支えていて下さるように、年金制度も支える側に回っていただくのです。これと2の(3)の支給開始年齢の引き上げが今後50年大丈夫な年金制度確立の一番の秘策です。

 若い人の数が減れば高齢者が頑張って元気に働いて社会も年金制度も支える!素晴らしいことではありませんか。

イ 賃金の高い人には年金の一部を支給停止に

 就労しておられる65歳以上70歳未満の方で、賃金と年金(報酬比例部分のみ)を合わせた額が37万円(基礎年金夫婦2人分を合わせれば50.4万円)を超える時は、賃金の伸び、2に対し、厚生年金(報酬比例部分のみ)1を調整する仕組みを導入します。ただし、老齢基礎年金は全額受けられます。月々50万円余迄の年金と賃金の合計収入の方には年金を全額支給し、それを越えてサラリーが高いときは、月給が例えば2万円高い時には年金の方を1万円支給停止するのです年金の目的は老後の所得を保障することなので、給料が良い時には少し支給額を減額させていただく趣旨です。70歳を過ぎれば年金は全額貰え、保険料を負担することもありません。

ウ 報酬比例部分の年金額を5%引き下げるが、しかし、これまでの年金額より下がる人は一人もいない

 厚生年金の報酬比例部分の年金額(モデル年金月額約10万円)を改正後に新たに裁定される年金については5%(モデル年金の場合月額約5,000円)引き下げます。これは改革の厳しい部分ですが、現在の厚生年金の水準での一人当たり可処分所得(自分で使えるお金)が働いて子育てをしている人たちの給与水準での可処分所得に比べてやや高めであるので、働く世代と年金世代の公平を保つためにこの改革を行うのです。ただし、従来の年金額(平成12年3月裁定迄の水準)を物価スライドした額は保証されるので、既に年金を受けている人と比べてこれからの人の年金額が不利になることは全然ありません。マスコミでは平均4,000円下がったと言っています。新規裁定者について過去の賃金を現在の賃金水準に直して計算する賃金スライドを完全に実施し、かつ、5%引き下げをしない場合に比べれば確かに 4,000円下がります。しかし、今まで年金を貰っている人には賃金スライドをしないことにしたのですから、同じ条件の人が新規裁定者のみ、従来のひとよりも平均4,000円高くなるのは不公平です。従って、新規裁定の時は必ず賃金スライドして計算することに改正後もなっているので、計算方式の方を5%引き下げ、それが従来の人よりも低いときには、従来の人と同じ計算方式で計算した年金額を必ず保証することにしたのです。従ってこれまでのやり方での年金額を下回る人はこれからも一人もいないのです。具体的には次のようになります。(これはあくまで平均的なモデルで個人個人はこれより多い人も 少ない人も有ります。言うまでもないことですが。)

改正前(94年度価格) 改正後(99年度価格)
(報酬比例部分のみ) モデル年金月額10万1000円 モデル年金月額10万4000円
(3.1%のアップを保証)

2.年金改革法の具体的内容

 最後に今回の改正の内容をまとめましょう。大いに改善された点もあるのです。

(1)年金額は前回の再計算(平成6年度、1994年度)に比べ、3.1%アップ(平成12年4月実施) 

改正前(94年度価格) 改正後(99年度価格)
国民年金 月額 6万5000円 6万7017円
厚生年金 月額(夫婦2人の総額) 23万1000円 23万8125円

(2)裁定後の基礎年金・厚生年金については、物価スライドによる引き上げのみ。 

 既裁定年金については5年に一度、再計算時に行っていた賃金スライドを止めますが、賃金が大いに上がって年金との格差が開いたときには政策スライドします。

(3)老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の引き上げ(平成25年度から実施)

 2013年から61歳から支給とし、それから3年毎に1歳引き上げ、2025年から65歳から支給にします。(女子は5年遅れ)。この間に定年制度を再雇用も含め、65歳迄年金よりははるかによい給料で働く制度にして行きます。若年人口が減るのでこれは可能です。なお、これに伴い、65歳迄働けないか働きたくない人のために、老齢厚生年金(報酬比例部分)の60歳からの繰り上げ支給制度を創設します。

(4)国民年金保険料の半額免除制度の創設(平成14年4月実施)

 これまでは全額払うか全額免除かでしたが、半額免除の制度も創設します。

(5)学生の出世払い制度も導入(平成12年4月実施) 

 学生の国民年金保険料を卒業後に追納できる納付特例を創設し、親の収入に関わりなく、手続きをして置けば、万一交通事故で障害者になった時に障害基礎年金が一生受けられるのです。

 これで学費と生活費のほかに保険料1万3,300円払わなくて良くなります。

(6)育児休業期間中の厚生年金保険料の事業主負担部分の免除(平成12年4月実施)

 前回と今回の改正で一人当たり月額3.万8千円(本人分と事業主分各1.9万円)保険料が安くなり、育児休業が取りやすくなります。又年金額の計算では保険料を払ったと見なされます。

(7)ボーナスを含む総報酬制の導入(平成15年4月実施)

 これまではボーナスからは労使合算で1%の保険料が徴収されただけですが、改正後はボーナスからも同じ保険料率で保険料が引かれます。そのかわり料率は安くなり、この大改革で本人負担はピーク時でも10%を越えることは無くなります。

(8)基礎年金の国庫負担を2004年迄に1/3から1/2に引き上げ

 平成16年(2004年)迄に安定した財源を確保して、基礎年金の国庫負担の割合を2分の1へ引き上げます。

3.農林年金の厚生年金の統合もこれで可能に

 農林年金は平成13年4月に厚生年金との統合を目指していますが、この改革法の成立でそれも確実に射程距離に入ってきました。

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